是宇須神
Liam Workerは一介の大工であった。彼は友人のWilliam EvansとJoseph Kingと共によく飲みに出掛けた。その度に、ウィリアムとジョセフはこぞってこんな話をする。
「君はまだゼウスとやらを崇めているのかい」
この妙な話には少々訳がある。
* * *
リアム達がまだ十代だった頃、物作りの得意だった彼らは共に大工を志した。彼らは常に行動を共にしていた。共に高等学校に入った。共に大学校に入った。同じ家に住んだ。彼らは人生のおよそ総てを、三人で過ごした。そうして二十歳に為って、共に大工に就いた。ウィリアムとジョセフは大工に就いたときからキリスト教に入信していた。しかし、三人の違いはここから生まれたのだった。リアムはキリスト教に入らなかった。彼は、天空神であるゼウスを崇めたのだった。彼はゼウス以外の神々を尊びはしなかった。三人で雉を狩りに出掛けたときも、リアム一人、四百米ほど離れた草叢で、ただゼウス神の名を出しながら、成功を祈って雉を打った。雉は打たれた。ウィリアム達は笑った。別段、ウィリアムとジョセフはこの事を蔑むこともなく、三人のたった一つの違いとしてよくリアムを誂う為に笑ったのだ。その度にリアムは、
「僕はゼウスを崇めている、世界に一人だけの信者さ」
と自慢気に話した。その忠誠心が天空のゼウスに気に入られたのか、彼は大工で度々成功していた。彼らの家は、三人で建てたものである。中でも、リアムの建てた所が一番出来が好かった。彼は家を建て終わった時、「ゼウス様が見守ってくださった」と燥いでいた。
* * *
リアムは自分の室にゼウスの金象を置いて、毎朝数十分ほど崇めた。二人はやっぱり笑っていた。
「今日もか」ジョセフは麺麭を喰っていた。
「ああ」
「今朝はちょっと長かったんじゃないか」ウィリアムは麺麭を焼いていた。
「そうかな。じゃいつもより祈りができたのかな」リアムも麺麭を喰い始めた。
「ハハハ。そりゃ愉快だ」
とこんな感じである。日曜は二人が教会に行く日だから、大抵リアム一人で過ごす。一人の時は、四六時中ゼウスを拝むか、ちょっと値の高い背広を羽織って散策に出掛ける。そうして隣人に声を掛けては、世情や世論を話して、時にその風説の著者を揶揄する。
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