はめにゅー

第27回Bunkamuraドゥマゴ文学賞が決定 松浦寿輝『名誉と恍惚』

もともと「新しい才能を認め、発掘に寄与」するために創設されたはずのBunkamuraドゥマゴ文学賞だが、73歳の文芸評論家が選んだのは63歳のベテラン作家だった。

2017年9月4日、第27回Bunkamuraドゥマゴ文学賞の選考結果が発表された。受賞作は松浦寿輝の長篇小説『名誉と恍惚』で、同作は谷崎潤一郎賞につづいて2冠となった。今回の選考委員は川本三郎が務めており、選評では「現代の小説にはあまりに軽い、深みのない文章の作品が多い」「久しぶりにいい文章を読む歓びを味わった」とまで激賞している。

Bunkamuraドゥマゴ文学賞は、1991年からはじまったBunkamura主催による文学賞だ。前年7月1日からの13ヶ月間に発表された文芸作品が対象となり、ジャンルは小説・戯曲・詩・評論と多岐にわたる。しかしなによりユニークなのは、選考委員がたった1人だけで、しかも毎年変わるという点だろう。選考委員の文学観や好みが如実に反映されやすいため、ほかの文学賞では名前を見かけないような作家が受賞した例も過去には少なくない。

そうした傾向を考えると、30年以上のキャリアをもち小説・詩・評論の各分野でそれぞれビッグタイトルの受賞歴がある松浦寿輝は、少々異例の受賞者といえるかもしれない。そもそもこの文学賞が創設されたのは、「既成の概念にとらわれることなく、常に新しい才能を認め、発掘に寄与」することが目的だった。今さら松浦を「発掘」というのも失礼な話ではあるが、選考委員がそれ以上の大ベテランであることを考慮すればご愛敬か。

もちろん川本自身もその点には自覚があり、選評では「若い人を選ぶべきではないかというためらいもあった」と語っている。それでも「圧倒的な面白さを前にしては、そうした迷い、逡巡は消えた」とつづけており、いかに高く評価しているかが窺えるだろう。選考過程まで踏まえれば、今回の結果もそれはそれでこの賞らしいのかもしれない。

なお次回の選考委員は、短篇集『間取りと妄想』が最近話題の大竹昭子が担当すると発表されている。