箱根・小涌谷にある岡田美術館にて、7月28日より特別展「歌麿大作『深川の雪』と『吉原の花』―138年ぶりの夢の再会―」が開かれている。《深川の雪》、《吉原の花》は、元は喜多川歌麿が親交のあった栃木の豪商・善野家からの依頼を受けて、「雪月花」三部作を構成するものとして肉筆で描いたものである。「月」にあたる《品川の月》はワシントンD.C.にあるフリーア美術館において貸出禁止とされているため来日は叶わなかったが、原寸大の高精細複製画が作成され、《深川の雪》、《吉原の花》と共に鑑賞することができるという。

なぜ138年ぶりなのか。1879年11月、栃木県の定願寺での展観に善野家が出品したのが、この三部作が揃って展示された唯一の記録だという。その後三部作は美術商によってパリへと渡った。《深川の雪》だけが1939年、時を経て浮世絵収集家によって日本に持ち帰られた。そして1952年に銀座松坂屋で展示されて以来、行方不明になってしまったという。それがさらに時を経て2012年に再発見され、岡田美術館の所蔵となったとのことだ。ちなみに《吉原の花》はコネチカット州のワズワース・アセーニアム美術館が所蔵。晴れてこのたび海を渡り、《深川の雪》との再競演を果たした。

1867年のパリ万博で日本は最初の公式参加を果たしており、続く1878年のパリ万博で西洋におけるジャポニスムが開花した。喜多川歌麿や葛飾北斎などの浮世絵に影響を受けた西洋の画家は、ゴッホ、モネ、マネ、ルノワール、ロートレック、ホイッスラーなど、枚挙にいとまがない。アールヌーヴォーの発展に影響を与えることになったのも頷ける。だからこそ、浮世絵作品は日本だけにとどまらず、様々な国の美術館に所蔵されているのだろう。その人気は近年でも変わらない。去年の6月、歌麿の作品《深く忍恋》がパリで競売にかけられ、74万5000ユーロ(約8800万円)で落札された。日本の木版画の落札額としては史上最高額だという。

歌麿の最高傑作と名高い、肉筆画の「雪月花」三部作。これらが揃って展示されたのが一度きり、それも138年前。本展で見られる《品川の月》は複製画にしても、原寸大で見られる。筆者含め、生きているうちにふたたびこんな機会に恵まれることはないかもしれない。会期は10月29日(日)まで。夏休みに行くもよし、紅葉を楽しみながら訪れるもよし。ぜひ歴史的競演を目に焼き付けよう。