ノーベル文学賞受賞作家・川端康成は、両親と死別した幼児期から旧制中学校卒業期まで茨木市で暮らし、この時期に文学への志を深めた。これにちなみ、茨木市は1985年に川端康成文学館を開館し、ゆかりの品を展示している。そして川端の生誕月である6月には『生誕月記念企画展』が開かれ、今年は川端文学が誘発した「観光ブーム」にスポットを当てている。

「ディスカバー・ジャパン」とは、国鉄(現JR)が1970年から展開した一大観光キャンペーンだ。そのキャッチコピー「美しい日本と私」が、川端康成がノーベル文学賞を受賞した際の記念講演「美しい日本の私」と似ていることから、この企画の担当者が川端にこのフレーズを使うことを打診したところ、快諾された上にポスターに使う揮毫までもらえたという逸話もあるそうだ。その書のパネルも見ることができる。

この企画展では、川端の「観光」と、川端文学が誘発する「観光」を強調している。特に『古都』などは「観光小説」と言われることも多いが、川端は小説を書くにあたり、その舞台となる様々な所へ足を運んだ。宮崎への取材をもとに川端が初めてテレビドラマのために書き下ろした『たまゆら』は1965年から1966年までNHK連続テレビ小説として放送され、この影響で宮崎への新婚旅行ブームがさらに高まり、「観光宮崎」が最高潮をむかえたという。また川端作品は多数映画化されており、それも観光の促進につながったとし、本展では『古都』や『雪国』の映画ポスターなども展示されている。

もちろん、川端作品と鉄道との関係もフィーチャーしている。【『雪国』と映画と鉄道と】というコーナーが設けられ、「夕景色の鏡」(『雪国』の第一章)が初めて掲載された文芸春秋も展示されている。個人的に、鉄道関連では「掌の小説」に収められている『秋の雨』もお勧めしたい。

今でいう「聖地巡礼」と、そこを「聖地」にした作家。その文学に映画化作品、鉄道を絡めて川端がディスカバーした美しい日本を探る本展は、なんと今月末までだ。急ごう。なお、この文学館ではユニークな書斎体験ができるようだ。「なりきり康成」である。参加者は書斎を再現したコーナーでカツラや着物を着用し、記念撮影を行えるとのこと。こちらも要チェックだ。