日本農民文学会が主催する第60回農民文学賞の受賞作が発表された。受賞したのは、大分在住の作家・古岡孝信の「シカ笛が聴こえる」で、農村で暮らす中年女性が猟師として第二の人生を歩む物語とのことだ。受賞作は、4月25日発売の季刊『農民文学』春の号に掲載される。

1957年に創設された農民文学賞は、農村での暮らしや土とのふれあいなど、自然と人間との関わりのなかから生まれた文学作品を対象とした文学賞だ。文芸同人誌によって運営されている賞ではあるが、過去の受賞者のなかにはメジャー文学賞でたびたび最終候補まで残っている者や地方文学賞の受賞経験者なども多く、要求される水準は高い。

今回受賞した古岡も、過去に新日本文学賞の受賞(1994)や新風舎出版賞の最優秀賞(2000)などに輝いているほか、公募時代の織田作之助賞や小島信夫文学賞で最終候補にまで残った経歴をもっている。その実力は折り紙つきだ。現在75歳と高齢だが、「年齢を重ねたことで、今まで見えなかったものが見えるようになった」と創作への情熱は衰えることを知らない。今後のますますの飛躍に期待したい。

なお、第61回農民文学賞の募集もすでにはじまっており、〆切は今年11月30日までとなっている。そちらもあわせてチェックしてみよう。