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岩手・島越駅の「吉村文庫」が5年ぶりに復活 震災を乗り越えて

三陸鉄道北リアス線の島越駅に、東日本大震災で失われていた「吉村文庫」が5年ぶりに復活した。地元ゆかりの作家である吉村昭の著作を集めたもので、新たな文化活動の盛り上がりが期待される。

2016年7月31日(日)より、岩手県田野畑村の三陸鉄道島越駅に吉村昭の作品をあつめた「吉村文庫」が復活している。1996年より同駅に開設されていた吉村文庫は電車待ちの人々に愛されてきたが、2011年の東日本大震災で駅ごと全壊していた。

記録文学で知られる吉村昭と田野畑村との交流は、1965年まで遡ることができる。田野畑村出身の友人から言われた「俺の村、小説にならんかね」という言葉をきっかけに村を訪れると、吉村は村内にある鵜ノ巣断崖をモチーフとした小説「星への旅」を執筆し、同作で第2回太宰治賞を受賞した。吉村が専業作家として本格的に活動するようになるのはこれ以降であり、彼にとって田野畑村は特別な場所となった。

以後も、妻で芥川賞作家の津村節子とともに吉村はたびたび田野畑村を訪れた。その交流のなかで吉村は自身の著書など200冊を村に寄贈し、それを受けて村は島越駅に「吉村文庫」を開設した。誰でも無料で手にとることのできるこの文庫は、田野畑村の人々のみならず、たまたま立ち寄っただけの旅人にも愛されたという。しかし、東日本大震災による津波の影響で島越駅は全壊し、吉村文庫もすべて失われてしまった。天災は人々の思いや文化を簡単に破壊する。

今回の復活劇は、石原弘村長が吉村文庫の再建を津村節子に伝えたことによって実現したものだ。今年5月に津村は吉村と自身の著書73冊を寄贈し、それをもとに吉村文庫が復活することとなった。復活の日となった7月31日は吉村の命日だ。この日が、田野畑村にとって新たな文化活動の記念日となることを願ってやまない。