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大阪一売れない本屋「青空書房」の名物店主・坂本健一氏が93歳で逝去

2016年7月2日(土)、老舗古書店「青空書房」の店主・坂本健一氏が93歳で亡くなった。「本に埋もれて死ねたら」と公言していた名物店主の死に、読書家たちの間では悲しみの輪が拡がっている。

大阪の老舗古書店「青空書房」の店主として有名だった坂本健一氏が、2016年7月2日(土)、心筋梗塞のため亡くなった。93歳だった。筒井康隆や田辺聖子、山本一力といった作家との交流があったほか、休業日に店のシャッターに張り出される手書きポスターも人気だった。

青空書房は戦後の闇市を起源にもつ古書店だ。15歳のときにモーパッサンを読んで読書に目覚めた坂本氏は、以後すっかりと本の虫になり、学徒動員で入営する際にも三好達治の詩集を持参していったほどだったという。22歳で終戦を迎えると、御堂筋の闇市で古書を売るようになった。あらためて店舗を構えて営業を開始したのは、その翌年からだ。

13平方メートルほどの店内には、文学・思想・美術関連の書籍を中心に常時2,000冊ほどの書籍が所狭しと並べられていた。読書文化を支えるため、高価な本を仕入れて原価割れで売ることもたびたびあったという。近年ではソーシャルメディアの発展に伴い、手書きポスターのユニークさばかりが注目されがちだったが、決して話題性だけではない正統派の古書店だったことがわかる。

もともと坂本氏が闇市で古書を売りはじめたのは生活のためで、そのとき陳列していたのは自らの愛読書だった。蔵書を泣く泣く手放すことからスタートした古書店だからこそ、本に対して真摯に向き合う名物店主が誕生したのだろう。坂本氏は青空書房を「大阪一売れない本屋」と自虐していたが、山本一力からは「本好き全員の海路を照らす灯台」とまで賞賛されている。

坂本氏は、亡くなった当日も店に立っていたそうだ。生前よりかねがね「本に埋もれて死ねたらええ」と言っていた坂本氏にとっては、理想どおりの最期だったのではないだろうか。