新潮文芸振興会主催の第29回三島由紀夫賞・山本周五郎賞贈呈式が、6月24日に都内のホテルオークラ東京で行われ、「伯爵夫人」で三島賞受賞の蓮實重彦さん、「ユートピア」で山本賞受賞の湊かなえさんが出席した。

この贈呈式に際し一番注目されていたのは、5月に三島由紀夫賞受賞が決定した後の記者会見で報道陣に対し厳しくあるいは不愉快そうな態度を取り続けた蓮實重彦さんの言動だろう。テレビや新聞等では勿論の事、ネット上でも大きな話題となり、様々な批評考察もされていた。贈呈式でもどの様なやり取りがされるのかと多くの人の興味をひきつけていた。

贈呈式では蓮實重彦さんは「聴衆を前にしてマイクを握ると何を口走るか分かりませんので」とあいさつ文を書いた紙を取り出し、「この授賞式が『自分の気に入ったこと』でないのはいうまでもありません。しかし、あたかもそれが『自分の気に入ったこと』であるかのように振る舞う才覚は、わたくしにも多少はそなわっております」「お読み下さったすべての方々に、複雑な思いのこもった感謝の言葉をさしむけさせていただきます」と、受賞会見とは変わって穏やかな口調で、しかし毒も含んだ文章を読み上げていた。

「ユートピア」を受賞した湊かなえさんは、次点にタレントの押切もえさんの作品が並び注目された事に触れ、「押切さんの作品は素晴らしいと思う。でも肩書はどうでもいい。面白いかどうか、それだけで十分」とコメントした。