はめにゅー

Juan.Bあるいは太い混血——『混血テロル』刊行記念インタビュー

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その衝撃的な内容によって破滅派に多くの衝撃をもたらした作家Juan.B。今回は処女作となる『混血テロル』の刊行を記念して、独占インタビューを行った。日本社会に「混血」として呪詛を撒き散らす彼の創作の裏側とは。

Juan.Bが破滅派に作品を投稿し始めたのは2015年12月。自身がラテン系在日ハーフであることを題材とした数々の刺激的な作品が立て続けに三作品発表された。その衝撃的な内容から、破滅派の同人が何人か退会したほどだ。強烈な個性を放つJuan.Bの創作の裏側について尋ねるべく、破滅派編集部は秋葉原駅でJuan.Bを待った。

昭和口に現れたJuna.Bは山刀マチェーテを携えてはおらず、少し大柄なだけのごく普通の青年だった。この彼からどうしてあのような激しい作品が出てくるのか、その謎を突き止めるため、早速インタビューを開始した。


まずはよろしくお願いします。さっそくなのですが、創作活動を行うようになった経緯について教えていただけますでしょうか。

もともとは高校生ぐらいのときに某ゲームサイトの小説フォーラムで二次創作をやっていました。ポケモンやドラクエのキャラクターが唐突に死んだり傷つけられたりするような、不条理な内容です。あとは自動筆記でわけのわからないものをぐわーっと書くものです。

2013年頃からtwitterをはじめ、だんだんラジカルな思想の持ち主がいるのだということを知るようになります。俺のテーマ※ハーフであることを理由とした迫害とは必ずしも一致していないんですけど、こうやって発表していいんだって。それから徐々に過激思想になりました。

破滅派に掲載したようなオピニオン小説というか、政治的主張を全面に押し出した小説はいつから書くようになったんですか?

2014年ぐらいから自分のサイト「太い混血」で小説を載せるようになりました。その後、もっと多くの人に読んでもらおうという思いから「小説家になろう」に投稿したのですが、三作目の『1988年の強姦』を掲載した時にR18なので「ノクターンノベルズ」に移せという削除要請が来ました。それで「なろう」の作品は削除して……一時期、「ハーメルン」という投稿サイトにも掲載しました。あそこはオリジナル作品が少ないので、ちょっと話題になったのですが、意図したとおり批判の嵐を巻き起こしましたね。結局、削除要請は来ましたが。

それで、投稿サイトを色々と検索して、破滅派にたどり着きました。雰囲気があっているかなと。

それでは個別の作品、特に初期の三部作について伺います。まず、処女作の『”誇り”高き人々』ですが、こちらはどのような経緯で書いたのでしょうか。

某宗教施設の博物館に行って、そのときの体験を元に書きました。

なるほど。自身の体験が元に膨らませて書いたわけですね。続いて『血は世界に満ちて』はどうでしょう。

俺が高校時代のときに教師と喧嘩して、それを元に書いています。仲の悪い教師がいて、そいつに「ハーフだから」みたいなことを言われたんですよ。

こちらも実体験を元に書かれていると。それでは最後、『1988年の強姦』についてお願いします。

それは昔、俺が親戚のおじいさんに話を聞いたことがきっかけなんですけど、日本軍の訓練生だったおじいさんが終戦後に同期と会ったら、その人が右翼思想にハマって、「愛国心がないから日本は負けた」とかそういうことを言ったらしいですよ。それで、俺はその話を聞いて、自分だったらどう思うかなと。

議論を聞いている最中に席を立つシーンでいったん終わっていたんですが、もっとこう、自分の気持ちを伝えられる過激な表現はないかなと悩んで、あのトイレのシーンを付け加えました。

ありがとうございます。それでは、答えづらいかもしれませんが、Juan.Bさんの生い立ちについて教えてもらえますでしょうか。差し支えない範囲で。

はい。あんまり詳しく言うと身元がバレてしまうんですが……日本人の父が海外で仕事をしていて、南米のある都市で雑貨屋の娘だった母と出会って。それで、日本に連れ帰って国際結婚しました。周囲の反対はあったらしいんですが。

病院は外国人でも安心して出産できる病院で、幼稚園も国際的な幼稚園でしたね。精密機械作る会社みたいな、綺麗な建物でした。でも裕福な家ではなかったので、結局親が無茶していただけです。小学校は普通の公立に進学しました。

1,2年生の頃はとくになにもなかったのですが、3,4年生ぐらいから段々ハーフであることを理由にいじめが始まりました。その頃、ちょうど学級崩壊が世間で騒がれていたので、保健室登校したり、地獄でしたね。

では、その頃から今のようなテーマについて深く考えるようになったんですか?

いや、そのときはまだ、なぜいじめられるのかはわからなくて。思考が自分の中だけで完結されていました。それで、中学は公立でしたけどわりと普通で……高校生のときに、ハーフの友達が警察官にひどい職質を受けたんですよ。それから警官が大っ嫌いになりましたね。あとは『血は世界に満ちて』で書いたとおり、教師からも差別されて。

あと、ネットとか見るようになると、ネトウヨがいるじゃないですか。そういうのにも反発を感じましたね。

でも、それから自分が創作活動をするようになって、「なぜあの人たちは差別するのだろう」とか、「ハーフとはなんだろう」ということについて深く考えるようになりました。

創作を通じて思考が深まったということですね。ありがとうございます。特に影響を受けた作家はいますか?

中学の国語教師がよく本を勧めてくる人で、司馬遼太郎とか、あと遠藤周作の『沈黙』なんかが印象に残っています。あと大江健三郎だと『新しい人よ目覚めよ』みたいな、障害児が生まれてからの明るい話が好きです。あとは本多勝一の『マゼランが来た』とか。

わりとマイノリティ視点の作品が多いですね。しかし、初期大江の『人間の羊』※バスの中で米兵と戦わなかったことを主人公が責められる話などではなく、中期以降なんですね。

はい。明るい話が好きです。

それでは最後ですが、今後の創作活動に対する意気込みなどお聞かせください。

今後も人々を困惑させて、悩ませるような作品を書いていきたいです。普通の日本人が俺の小説を読んだとして、困惑するのは普通です。弱者がいつまでも弱者だというような、単純な構図も好きではないです。俺はそういうのを乗り越えるようなことを書いていきたい。

ありがとうございました。

「テーマは混沌」と笑うJuan.B

Juan.Bの直近のテーマは混沌だという。現在執筆中の『続・血は世界に満ちて』は自殺エンドに終わった前作の続きというIF小説だ。艦これなどのサブカルチャーも題材にする予定だという。主人公はもちろん悪人。Juan.Bのアンビバレントな攻撃的文章に興味がある方は続きを楽しみにして欲しい。