11月14日に全米図書賞の授賞式が開かれ、多和田葉子による小説「献灯使」が全米図書賞翻訳部門を受賞した。日本語から翻訳された作品が受賞するのは36年ぶり。

多和田葉子は、現在ドイツ在住の58歳。早稲田大学卒業後にドイツに移住し、1993年に「犬婿入り」で芥川賞を受賞した。ドイツ語でも多くの作品を発表しており、2016年にはドイツで最も権威ある文学賞「クライスト賞」を受賞している。今回受賞した「献灯使」(訳:The Emissary)は、大地震や原発事故といった災害に見舞われて汚染の末に鎖国したもう一つの日本が舞台の近未来小説であり、死ぬことが出来なくなった老人と、健康を害し貧弱な曾孫の姿を通じて時代の閉塞感を描写している。翻訳はマーガレット・ミツタニ(Margaret Mitsutani)が担当した。

全米図書賞(National Book Awards)はアメリカで最も権威のある文学賞の一つであり、フィクション・ノンフィクション・児童文学・詩、そして1983年で一旦無くなり今年から復活した翻訳の5部門で構成されている。翻訳部門においては以前にも日本語文学が度々取り上げられており、1971年に川端康成の「山の音」が、1974年に 後深草院二条「とはずがたり」が、1982年には樋口一葉の作品集と万葉集が受賞していた。それ以来日本語翻訳作品がこの賞を受賞するのは36年ぶりとなる。多和田葉子の更なる活躍と、日本文学の更なる発展と飛躍を期待したい。