2017年12月12日、東京都青梅市の吉川英治記念館が閉館危機に陥っていることがわかった。来館者はピーク時の1割程度まで落ち込んでいるといい、2016年度は1,600万円超の赤字を計上していた。運営する吉川英治国民文化振興会は青梅市に記念館の寄付を申し入れたが、否決された場合には閉館を余儀なくされそうだ。

1977年に開館した同館は、吉川英治が1944年から1953年まで約10年にわたって暮らした旧宅を利用した記念館だ。直筆原稿やゲラ、愛用品など約2万点の資料が所蔵されている。多くの作品が映像化され国民的作家の名を欲しいままにしていた吉川とあって、ピーク時には年間17万人もの来館者があったという。

しかし時代小説家の宿命か、近年はファンも高齢化が進み、来館者は大幅に落ち込んでいる。通年営業から期間限定営業に切り替えるなどコスト削減にも取り組んできたが、5,000平方メートルを超える敷地を管理するだけでも人件費が嵩んでしまい、深刻な経営難に陥っていた。

開館40年を迎えた年に閉館の話題が出るというのは皮肉な話だが、土地・建物を含め文化的価値のある貴重な記念館だけに、青梅市の英断が待たれる。