小学館の文芸ポータルサイト「小説丸」で、メフィスト賞作家・蘇部健一の小説のタイトルが公募されている。期間限定で全文公開されている新作恋愛ミステリー『小説X』を読んだうえでタイトルを応募するという企画で、最優秀タイトルには賞金5万円、ほかの最終候補にも賞金1万円が贈られる。

特設サイトに寄せられた蘇部のメッセージによれば、『小説X』は「日本じゅうをあっと言わせるような大傑作」であるとのことだ。キャリア20年にして今なお牛丼屋で時給1000円のアルバイトをしているという蘇部は、本作を大ヒットさせて極貧生活から抜け出すことを目指しているという。

ところが、困ったことに作品に相応しいタイトルがなかなか思いつかない。もともと自分で決めていたタイトルもあったそうだが、ネタバレになるから変えたほうがいいと某ミステリー作家からアドバイスされたらしい。そこで出版社ぐるみで持ち上がったのが、今回の『小説X』だったわけだ。

企画内容といい企画タイトルといいどこか既視感を禁じ得ない部分はあるが、ブクログ通信に掲載されたインタビューによれば、新潮社の『ルビンの壺が割れた』やさわや書店フェザン店の『文庫X』を念頭に置いた企画であることは開き直って明言されている。出版界全体を盛り上げていこうという姿勢だと好意的に捉えたい。

『小説X』は小説丸のほか、KindleやKoboなど各電子書籍ストアで全文が無料公開中だ。タイトル応募期間は12月7日までとなっているので、興味のある読者は急ごう。