2017年10月31日、丸善ジュンク堂書店は『手塚治虫全集』の刊行を発表した。同全集は手塚の誕生日である11月3日からオンデマンド出版で順次刊行され、全343巻を予定している。過去にも手塚治虫の全集は複数出ているが、手塚プロダクションが直接編集を手がけた全集は今回が初となる。

手塚治虫といえば、言わずと知れた「マンガの神様」だ。わずか60年の生涯で手塚が残した功績は、ここでは語りきれないほど多い。そんななかでも、従来の漫画が演劇的なコマ割りであったのに対し映画的なコマ割りを導入した点は特筆に値するだろう。また、「マンガ」というカタカナ表記にこだわっていたこともサブカル論的には非常によく知られている。手塚以前/以後で日本の漫画が大きく変わったことに異論を唱える者はいないはずだ。

今回『手塚治虫全集』が刊行されるにいたったのは、丸善ジュンク堂側からのオファーだったという。2014年以来、全国の各店舗で「手塚治虫書店」と題した特設コーナーを展開してきた丸善ジュンク堂は、生誕90年にあたってなにかしらの記念企画を実施したいと考えた。そこで、在庫管理に煩わされることなく手塚作品を提供できるオンデマンド出版を手塚プロダクションに提案したのだそうだ。これに手塚プロ側も快諾し、かくして本邦初の手塚プロ完全編集による全集が登場することとなった。

第1回刊行作品は5冊。『ブラック・ジャック』『ブッダ』『七色いんこ』『ロストワールド』『ザ・クレーター』の各作品の第1巻がラインナップされている。以後、毎月3日に5巻ずつ刊行され、足かけ5年で全343巻を網羅する予定だ。また、手塚自身が雑誌サイズを念頭において執筆していたことを考慮し、今回の全集ではB5サイズでの刊行が基本となる。そのほか、受注生産でB6サイズも用意される。

各巻は店頭にも展示されるほか、オンライン書店hontoでも購入することができるという。オンデマンドならではの強みとして品切れがありえないので、今からあらためて手塚マンガに触れたいという人にもやさしい。かつてDVD-ROMで発売された赤塚不二夫全集がすっかりアウトオブデイトになってしまっていることを踏まえると、漫画家の全集のありかたとしてはオンデマンド出版という形が理想的なのかもしれない。