2017年10月6日、新宿・歌舞伎町に「歌舞伎町ブックセンター」がオープンする。経営するのはホストクラブや飲食店を複数展開するSmappa!Groupの手塚マキ会長で、 ホストやホステスが接客をおこなうのが最大の特徴だ。店内に置かれる約2,000冊の書籍はすべて「LOVE」がテーマとなり、かもめブックスのオーナー柳下恭平が選書を、東京ピストルの草彅洋平が店舗プロデュースを担当することも発表されている。

今回手塚が歌舞伎町に書店をオープンしようと考えたのは、夜の世界で働く人々に「もっと本を読んでほしい」と考えたためだという。手塚自身これまで何度も本に救われてきた経験があり、だからこそ若いホストやホステスたちもアルコールばかりに癒しを求めるのではなく、読書によって心の幅を広げてほしいと願っているのだそうだ。

この理由としては、歌舞伎町で20年にわたって働いてきたなかで「新宿に恩返ししたい」という気持ちが年々強まっていることが挙げられている。実際に手塚は、ホストによるボランティア団体を結成してゴミ拾いをおこなったり、セカンドキャリア形成のためマナー講座を開いたり資格を取らせたりと、従来の経営者とは一線を画した活動を展開してきた。

読書の啓蒙もそうした活動の一環と考えられるだろう。これまでにも、自身の経営する店舗でさまざまな読書推奨策を試みたことはあったという。しかし残念ながら、ゆっくり本に向き合う時間の少ないホストたちに読書が浸透することはなかった。その失敗を受け、本を読んでもらうためには歌舞伎町らしい面白みのある書店を自分で作るしかないと思い至ったようだ。

歌舞伎町ブックセンターでは、酒やコーヒーを飲みながらホスト書店員とじっくり本の内容について語り合ったり、おすすめの本を紹介してもらったりできるという。また、ホストクラブやキャバクラのようなランキングシステムも導入され、お気に入りの店員から本を買うことでランクアップに貢献することも可能だ。そのほか、ホスト書店員が最寄駅まで届けるオプションなども提供される予定となっている。

もっとも、このシステムで売られた本がどれだけ実際に読まれるのかは微妙なところではある。アイドルのCDが単なる握手券に成り下がっているのと同様の現象を招く可能性は、充分にありうるだろう。しかし筆者個人としては、購入者の1割でもちゃんと読書をするのであれば、充分に試みは成功といえるように思える。

なおクラウドファンディングサイト「Makuake」にも歌舞伎町ブックセンターを支援するプロジェクトが起ち上げられているので、興味のある人はそちらも参照されたい。