ドイツに拠点を置く学術書専門出版社De Gruyter社は2017年9月5日、創業以来の4万冊におよぶ刊行物をすべてデジタル化すると発表した。計画では2020年までにデジタル化を完了する予定となっており、2017年中だけで3000タイトルがリリースされるという。

De Gruyter社は、1749年にベルリンで創業した出版社だ。270年近い歴史をもつ老舗だが、学術書をメインに扱うという性質上、同社では早い時期からデジタル時代ならではの資料の取り扱いかたを模索してきた。2009年から書籍のオープンアクセス(OA)化を進めると、2013年にはすべてのOAコンテンツにクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを導入、2017年3月にはウェブサイト上にOAライブラリを開設している。人文科学系では世界最大級のOA出版社とされる。

文芸やデザイン関連の書籍では紙の本へのこだわりが強い層もまだまだ多いが、こと学術書に関してはデジタル版のほうが圧倒的に利便性に優れていて需要が高い。今回発表されたサービスも、そうした時代の潮流とニーズを受けてのものだと考えられる。老舗出版社が率先して紙からコンテンツを引き離そうとする動きは、ドイツらしい質実剛健さの表れといえるかもしれない。

なおDe Gruyter社ではすでに絶版本をオンデマンドで電子書籍化するサービスも提供しているが、そちらはデジタル化の完了とともに段階的に役目を終えるようだ。