日本人ならみんな大好き、藤原定家(1162~1241)の撰によるいわゆる『小倉百人一首』。正月の風物詩になった理由の他、その成立や撰歌の謎に迫る企画展が東京都千代田区の国立公文書館で9月9日まで開催中である。

 

末次由紀によるマンガ『ちはやふる』の影響を考慮するまでもなく、「百人一首」と言えば普通は『小倉百人一首』の事を指す。しかし「百人一首」という言葉自体は百人の歌人の作品を一首ずつ選んでまとめたものの意味であり、「百人一首」と名の付くものは『新百人一首』、『源氏百人一首』、『犬百人一首』、『平成百人一首』などなど数百種類以上あると言われている。これらは全て『小倉百人一首』を真似て作られたもので、「異種百人一首」や「変わり百人一首」などと呼ばれている。

 

そんな数多くのフォロワーを生み、原点にして頂点に君臨し続ける『小倉百人一首』は、藤原定家が宇都宮頼綱から小倉山山荘の襖の装飾のために依頼された色紙が原型となっている事から『小倉百人一首』と呼ばれている。しかしその詳細な成立過程や撰者については明確になっておらず、1951年に発見された同じく藤原定家の撰である『百人秀歌』の存在や、「承久の乱」の撰歌への影響、定家の嫡男である為家の関わりなど諸説紛々なのである。成立当時70歳前後であった藤原定家も、まさか後世にこれほどまで影響を与え800年後にもその名を残すことになろうとは思っていなかったのではないだろうか。

 

本展では、狂歌作者である信海(1626~1688)の自筆と考えられる小倉百人一首の巻子本『小倉山庄色紙倭歌』や、異種百人一首のひとつである『武家百人一首』、藤原定家と式子内親王(1149~1201)の秘密の恋を合戦譚や霊験譚を織り交ぜて描いた人形浄瑠璃の正本『小倉山百人一首』が展示される他、作品解説などもあるようなので、広瀬すず主演の映画から興味を持ったミーハーなあなたにも楽しめるはずだ。

 

なお、国立公文書館つくば分館では夏の企画展「おもしろ地獄ー地獄はたのしい?ー」も開催中である。