学習院大学史料館では現在、春季特別展『宮廷装束の世界 -宮中の装い、いまここに-』を開催中だ。近代以降の皇族・華族が祭祀や儀式の際に着用した装束等が紹介されており、日本の伝統文化の一端を直接見ることのできる貴重な機会となっている。古典文学の愛読者ならずとも注目の展示といえるだろう。

衣冠束帯や十二単といった日本の宮廷装束は、7世紀に律令制とともに大陸からもたらされたものだ。戦乱期にはその伝統が途絶えたこともあったが、江戸時代に有職故実の研究が進んだことで再興されるにいたった。皇室に洋装が取り入れられた明治時代以降も即位や婚礼といった重要な儀式の際には伝統的な宮廷装束が用いられているので、30代以上の世代であれば何らかの機会に映像等で目にした人も多いのではないだろうか。今回閲覧できる資料にも、昭和大礼において実際に用いられた装束が数多く含まれる。

筆者も先日訪れたが、皇室と関わりの深い学習院ならではの充実した資料には目を見張るものがあった。展示室はけっして広くはなく資料の点数も少ないが、フィクション以外ではなかなかお目にかかれない伝統装束だけに、質感を間近で感じ取ってみたい人にはおすすめだ。会期は5月27日(土)まで。入場無料。