NHK総合テレビのドキュメンタリー番組『にっぽん紀行』で、北海道の留萌ブックセンターが特集される。過疎化の進む街にある唯一の書店が、地域にとってどれだけ大きな存在なのか、どのような意味をもつのかが伝えられる。放送は4月15日(土)18時05分から。

留萌ブックセンターは、2011年7月に開店した書店だ。運営するのは全国に30店舗以上を構える大手書店・三省堂だが、こちらの留萌ブックセンターはそんな中でも異色の店舗となっている。というのも、従来三省堂は人口30万人規模の都市にしか出店をしてこなかったのに、留萌市の人口は3万人にすら満たないのだ。

道北に位置する留萌市には、1960年代までは4万人以上が居住していたという。しかし炭坑の閉山や漁業の衰退などにより人口は流出する一方で、今年3月末時点ではわずか22,000人まで落ち込んでいる。過疎化とともに経済も停滞し、2010年には市内唯一の書店が閉店した。以前、はめにゅーでは北海道内の書店や図書館がいかに不足しているかについても報じたが、留萌も例外ではなかった。

そこで市民が声をあげて誘致したのが、この留萌ブックセンターだった。三省堂としてもこの規模の街に新店を出すのは英断だったが、熱意に負けた格好だ。以来、留萌振興局や地元図書館などとも連携し、留萌ブックセンターはさまざまなイベントを企画しながら街に根付いてきた。開店以来、赤字になった月はほとんどないという。まさしく文字どおり地域に愛され育てられた「みんなの書店」だといえるだろう。

ネットで気軽に本が買えるようになって久しい現在ではあるが、通販には偶然の出会いが足りない。読書家であれば、「書店でたまたま見かけた本をなんとなくパラパラとめくったら気に入って買ってしまった」という経験は誰しも一度ぐらいあるのではないだろうか? そうした出会いを経験できないのは、特に小さな子供にとっては大きな損失といえるだろう。出版不況が叫ばれる昨今だからこそ、留萌ブックセンターの取り組みにあらためて注目したい。