2017年3月1日(水)18時より、TBSラジオで特別番組『三島由紀夫を聴く ~1970年2月19日のインタビューテープ』が放送される。今年1月にTBS社内で発見され話題となった文豪・三島由紀夫の肉声を流すプログラムで、その「声」をめぐって識者たちによる座談会形式で語り合う1時間となっている。

このインタビュー音源は、市ヶ谷駐屯地での自決から遡ることわずか9ヶ月前に収録されたものだ。45年の生涯を駆け抜けた文豪のまさに最終章というべき時期の肉声ということで、この音源の発見は大きなニュースとなった。先月発売の「群像」で大々的に取り上げられたことも記憶に新しい。

しかし今回の特別番組が興味深いのでは、インタビューの言葉・内容そのものよりも「声」にスポットを当てている点ではないだろうか。思想的・文学的な分析や解説は文芸誌に任せて、ラジオはラジオらしく「声」だけにこだわろうというスタンスは、21世紀のラジオのありかたとしては頼もしいとすら言える開き直り具合だ。言葉の速さや息づかいといった部分から「三島由紀夫」像を立体化させようという試みで、一般的な教養番組とは一線を画したものとなりそうだ。

出演する識者は、花街に関する著作でも有名な作家の岩下尚史、三島作品を手がけたこともある映画監督の吉田大八、そして三島由紀夫文学館の特別研究員である山中剛史の3名となっている。さらに、テープを発見したTBSの小島英人プロデューサーによる証言もオンエアされる。

生前の三島と親交のあった著名人も、もはや存命なのは美輪明宏と横尾忠則ぐらいとなった。その劇的な死からもうすぐ半世紀が経過しようとしている今だからこそ、あらためて生身の人間としての三島に触れてみよう。