野晒詩(のざらし)

小説書き123456

1,010文字

昔に見た夢と新宿の某レンタルルームでボンヤリしながら紡いだものです。

ある暑い日に私は行き倒れました

喉がとても渇き カラカラになり まるで血液すら全て蒸発してしまったかのように私の水分は全て無くなり 意識も蒸発して 私は倒れました

バタリと前のめりに 何の意味も無く 死ぬることすら 気づかずに

まるで機工の油が切れるように ギシギシという 音を立てて 手足が重くなって

私の身体は動かなくなり 当たり前のように

私の身体は 砂煙の舞う地面に落ちたのです

私の身体は生身であるが故に 腐り 朽ち果てるはずでしたが

その前に私を見つけた野犬によって食われはじめました

柔らかい首の肉から咀嚼され 腕 太もも ふくらはぎ わき腹

まるで解体されるように私の肉は動物達によって細かくされていきます

私の肉片は私という存在から離れ 動物達の身体の一部となり

そしてそれにすらなれなかったものは強烈な臭気を放つ

一つの糞と成り果てました

私の身体がまるで部品売りされるように離されていくのを

私はクリアな意識で観察していました

痛みはありません 身体はもちろん動きません

だから私は死んでいるのです

ですが私は私だということを知っていて

私は私が少しずつ私では無くなっていくのを一番手前で観覧しているのです

そして動物達はメインの肉であるロース スペアリブ モツにハツにレバーを食べつくすと一番食べづらい部位である頭部にかぶりつき始めました

その頃には私の身体はグズグズと柔らかくなりはじめ 肉質が熟成されていたのであっさりと頭蓋骨から頭皮がトロリと剥がれ落ちました

もちろん痛みはありません

ただ頭がスースーするくらいなのです

動物達はさすがに分厚い頭骨を噛み砕くのは苦労していましたが少しずつヒビを入れていってやがてバキリという音を立ててフタが開きました

そしてその中にあった『私』であるはずの部位を時には舐めとりながら

時にはかぶりつきながらあっという間に平らげられてしまいました

ですが私は私に気づいています

すでに私の身体はバラバラの骨となりはてて かつての形すら 保っておりません

動物達もすっかりと私に飽きて どこかへと去っていき

その場に居るのはかつて私であった物と 私 だけです

私は死にました

私は野晒しになっています

私はここにいます

強い風にあちこちに動かされ ほこりと砂に塗れ

硬かった骨もまるで土と少しずつ同化していきます

ですが私はここにいます

私はここにいるのです

やがて骨も土塊になりはてて 私だったものは なくなりました

そしていつのまにか 私も無くなりました

はたして 私は いつ死んだのでありましょうか?

2017年3月30日公開

© 2017 小説書き123456

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