1月21日に公開される、マーティン・スコセッシ監督による映画「沈黙―サイレンス―」。その原作小説である「沈黙」の新潮文庫版が累計部数200万部を越えた。

カトリック教徒の小説家・エッセイストであった遠藤周作(1923-1996)は、それまでの自身の信徒としての経験や日本における宗教観を問う作品として、1966年に「沈黙」を書き下ろした。江戸時代、鎖国し国内のキリスト教徒を弾圧していた日本・九州に潜入するポルトガル人宣教師と、周囲の日本人達、そして先に潜入失敗し棄教した先輩宣教師を巡り宗教を軸に進む物語は、様々な反応や話題を呼び、作中の台詞である「この国は沼だ」は日本の価値観を抉る当時の流行語ともなった。世界13カ国語に翻訳され、1971年には最初の映画化もされた。

新潮文庫版「沈黙」は1981年に発売されたので、36年目にして200万部を越えたことになる。映画公開の効果などもあり、これからも部数は大きく増えていくだろう。再び日本の宗教観と向き合う名作に脚光が集まっている。