電子書籍配信の大手であるパピレスは2016年11月15日(火)、実用書専門の電子書籍配信サイト「犬耳書店」をオープンした。コンセプトは、サイト上部にも掲げられている「読みたいトコだけ買える本。」というもの。従来の電子書籍と違い、読みたい部分だけを切り取って買えるのが特徴だ。

サイト名にある「犬耳」は、英語の「dog-ear」(=しおりや付箋のかわりにページの隅を折ること)を直訳した造語だという。dog-earがあれば読みたい部分をピンポイントで見つけられるわけだから、サイトコンセプトに相応しいネーミングといえるだろう。

提供されるコンテンツも充実している。約8万点のラインナップはいずれも出版社経由のものであり、信頼性の高い情報のみを厳選して利用することが可能だ。また、専用端末やアプリなどのダウンロードが不要というのも嬉しい点だろう。購入済みコンテンツはクラウドに保管されるため、 デバイスを横断して読むこともできる。ユーザーの利便性を第一に考えたシステムは、まさに実用書専門サイトの面目躍如といったところか。

しかし、こうした利用法が可能になると、もはやこれらの情報コンテンツを「電子書籍」と呼ぶのは適切でないのかもしれない。音楽配信の普及によって「アルバム」というフォーマットを意識しない世代が登場してきたように、「書籍」というフォーマットも今後形骸化の一途を辿っていくものと思われる。犬耳書店のオープンは、今後出版史を語るうえで重要なトピックとなる可能性があるだろう。