今月は4誌が発売。

新潮2016年12月号

  • なんといっても目玉特集は「手塚治虫のエロティカ《初公開 永久保存グラビア!》」。ジャンルを問わず多くのクリエイターに影響を与えつづける国民的漫画家の未公開素描とあって、Yahoo!トップにも掲載されたほどの注目度だ。同特集には筒井康隆も寄稿している。
  • 創作では、登山家でサバイバル文学の旗手でもある服部文祥や、芥川賞作家・玄月の新作などが掲載。平野啓一郎は、自身初となる戯曲(!)を発表している。
  • 綿矢りさ×万城目学×森見登美彦による鼎談「愛しんどい京都」は、はじめて故郷・京都を描いた綿矢りさが京都小説の達人たちと語り合う。
  • 島尾ミホの評伝を上梓したばかりの梯久美子は、それを補完するような「甦る幻の島尾日記」を寄稿。
  • 手塚特集の反響で売り切れが続出しているが、新潮公式ツイッターによれば増刷決定とのこと。11月19日(土)以降順次書店に並ぶ予定だという。

文學界2016年12月号

  • 今号より西村賢太の新連載「雨滴は続く」がスタート。
  • 創作は加藤秀行、諏訪哲史、そして最近やたらと各誌に新作を発表しまくっている椎名誠というラインナップ。
  • 評論は、鴻巣友季子がボブ・ディランのノーベル賞受賞について、矢橋透がゴダールについて書いている。
  • 対談は2題。平野啓一郎×杉本博司の「なぜ今、「ジャン・コクトー劇」か」と、関川夏央×高橋源一郎「『坊っちゃん』の青春、現代の青春」が掲載。
  • 与那原恵の紀行文「石内都と熊本、広島を旅する」も。
  • 特集は、良くも悪くも文學界らしい「書を持って町へ出よう」というもの。タイトルはつまらないが、堀江敏幸、角田光代、村田沙耶香といった作家陣のみならず、菊地成孔、サンキュータツオ、都築響一、能町みね子といったサブカル界隈の面々にも声をかけている点は興味深い。

群像2016年12月号

  • 多和田葉子の新連載「地球にちりばめられて」がスタート。
  • 創作での注目は、舞城王太郎「トロフィーワイフ」(110枚)。
  • 第60回群像新人評論賞の結果も発表されている。受賞作2作(川口好美「不幸と共存――シモーヌ・ヴェイユ試論」 / 宮澤隆義「 新たな「方法序説」へ――大江健三郎をめぐって」) および選評が掲載。
  • 武田将明の連作評論「小説の機能」は今号で最終回を迎える。
  • 佐藤康智による「コンビニ人間」論にも注目したい。

すばる2016年12月号

  • 第38回すばる文学賞を受賞した上村亮平の受賞第一作「よっつの春」が掲載。
  • 第39回すばる文学賞で佳作となった竹林美佳の受賞第一作「愛の単離」も掲載。
  • ほかに創作では、広小路尚祈、喜多ふあり、そしてこちらでも椎名誠の新作が掲載されている。
  • 評論では、杉田俊介が空前の大ヒットを続ける映画『君の名は。』について書いている。
  • ボブ・ディランのノーベル文学賞受賞については、戌井昭人、飯野友幸、前野健太の三名が寄稿。
  • エッセイは前田司郎、ブレイディみかこ、鈴木晴香。
  • すばる海外作家シリーズでは、日系アメリカ人作家ジュリー・オーツカの「Diem Perdidi」を取り上げている。訳・解説は柴田元幸。

以上、2016年11月発売の4誌について概観をお伝えした。