Kindle Unlimitedは9月に入ってから出版社が引き上げるなどのネガティブなニュースもあるが、景気のいい話も聞かれる。いま同人誌界隈をざわつかせているのが、同人サークルIronSugarによる売上レポートである。それによると、7月までは実売2,787円だったところが、8月はKENPの対価が2,816,022円、実売145,158円とのこと。

この凄まじい売上げアップについてのIronSugarによる勝因分析は次の通りだ。

・IronSugar作品の質・ボリューム(ページ数)が一定水準をクリアしていた。

・CG集というページ単位で読ませる作品構成がシステムにマッチしていた。

・無料キャンペーンで一気に順位を上げてその勢いで首位をキープできた。

・勢いがあるうちに作品の追加投入を素早く行い、更に勢いを加速させた。

CG集という構成についての分析は確かに的を射ている。Kindle Unlimitedは「何ページ読んだか」で課金されるため、じっくり読もうがペラペラめくろうが同じことだからだ。500ページの長編小説ならためらう人は多いだろうが、エロCGなら一気にページを繰ることが可能だろう。

以前、Kindle UnlimitedからCOMICリュウが撤退したことを報じたが、9月からの相次ぐ作品引き上げの一因は「Amazonが思っていたよりも日本人は漫画を沢山読む」という国民の消費傾向により、当初予定した予算よりもたくさん読まれてしまったことがにあるという。

また、現在のランキングシステムもこの爆発的な売上向上に寄与したことだろう。Kindle Unlimited対象であろうがなかろうが同じランキングなので、一位を獲得すれば凄まじい売上を獲得することができる。

こうしたシンデレラ・ストーリーを聞くにつれ、ぜひあとに続きたいと思うものだが、IronSugarはブログ記事をkindle unlimitedに求められているのはエロです!と締めくくっている。たしかに、上記に挙げられた条件に合致しそうなのはエロ本しかなさそうだ。官能小説にしたところで、そこまで早くページをめくることはできないだろう。

考えられそうな形式としては、改行を多様した詩集や名言集だろうか。それならばページ数を稼ぐことができる。どの時代でもその入れ物に応じてコンテンツを変えていけないのが書き手の宿命だが、文芸作品の作り手である破滅派同人諸氏はよいアイデアをお持ちだろうか。