※画像はイメージ。竹下通りで在日人・ハーフに対し不当職質を行う警察の画像。筆者撮影。

第10回日本SF新人賞受賞作家の天野邊あまのほとりが、10月4日に警察から脅迫を受けたとのツイートを行った。

天野氏は、クジラと人間とネットワークの邂逅を描いたSF小説「プシスファイラ」で2008年の日本SF新人賞を受賞した作家であり、また朝鮮半島にも出自を持つ。天野氏は様々な媒体で執筆を行いつつ、度々ツイッター上で多様な性のあり方や政治について積極的に発言を行っていた。

そんな天野氏の近辺に異変が起きたのは10月4日の昼過ぎであった。天野氏の自宅に警察がやって来たのである。

既に10月3日の段階で警察は天野氏不在の家を訪れており、4日に天野氏が帰宅した所を見計らい再びやって来た様である。

警官は所轄署の人間ではなく、スーツを来た男一人、女二人の計三人組で、警察手帳をかざして身分を明らかにし、天野氏のツイッター上での活動に対して脅迫とも取れる言動を取った。直接拘束や家宅捜索を行いに来たと言う訳でもなく、ただ「忠告」しに来たと言う点にもとても薄気味悪さが感じられが、一体何の意図で接触してきたかの意図も明確ではない。この脅迫的行為に触れた天野氏のツイートは1000RTを越えて拡散されている。

警察が天野氏に接触した原因として現在考えられるのは、天野氏がツイッター上で自身に関する政治的及び性的立場を明らかにしていた点・多様な性のあり方を擁護してきた点等で、天野氏と考えを異にする集団などにより所謂「通報」行為が執拗に行われた末の結果ではないか、と言う事である。以前から「プシスファイラ」のAmazonレビュー欄に、内容とは関係ないスパム的コメントが投稿される(現在は消えている)などの嫌がらせは発生していた。

昨今のツイッター上では、主にエログロ系を扱った表現者に対し、作品の削除やアカウント凍結を狙った組織的な通報が行われ、それによる凍結が相次ぎ問題となっていた。結果、一部の表現者はツイッター上での作品公開をあきらめ、Pixivなど他サイトに戻る動きも見せている。

この場合の組織的な通報は、主にエログロ表現や男性を憎悪する女性を中心とした、(ネットスラングで「レディース」と呼ばれる)男女論集団によって行われている、と言われている。今回の事件は、特に異常な質・量の「通報」が行われた末に、政治的に警察が動かされてしまったと言う推測が立つ。しかし明確な犯罪予告などと違い、ネット上での性的立場・政治的立場の表明や表現の形により警察が動かされると言う状況まで発生した点でショックが広がっている。

現在、天野氏は各方面への対応を考えていると言う。表現の自由が脅かされない為にも、また警察に余計な力を与えない為にも、筆者は今後もこの事件を注視して行きたい。

また、「プシスファイラ」の電子書籍版が近日出版予定である。これを買う事で天野氏を応援する事も出来るだろう。