こんにちは。高橋です。前回の続きです。

今回のトピックは損益についてです。「破滅派のくせに損益計算かよ」と思う向きもあるでしょうから、いまのところどういう風に考えているかを共有しておきます。

ただ、あんまり細かい話をしてもしょうがないし面白くないと思うので、原価と利益については割愛します。「出版」や「Web制作請負」を生業にする限りは普通の出版社やWeb制作会社と同様の利益体制になってしまうので、あんまりうまくいかないかなと思っています。できることはまあ普通にやっていきますが、現在取り組んでいることを幾つか書きます。

破滅派を事業体として考えたとき(実際に法人格も持っているのですが)その主な部門は2つあります。出版とWebです。この2つにわけて書きます。

出版

出版については既存の流通に則っていく方法がまず一つありますが、これ以外に「自分達で販路を持つ」というのがあります。その取り組みの一つがミニコmeです。

本当は書店直接営業などもやりたいのですが、いまはそこまで手が回らず……というより、破滅派にそこまでの知名度&点数がないので、営業コストがかかりすぎるのです。ある程度のラインナップが揃って、知名度も向上すれば直接営業していくこともできますが。最近、東浩紀氏率いる思想地図βが大成功を収めたので、直接取引もうまくいけばいいのですが、「こういう本作ったから興味のある書店さんはどうぞ」という方法はある程度の実績がないと駄目ですね。

出版に関してはビジネススキームがある程度確立しているので、細かな工夫をするしかないのかなーと思っています。地道にがんばります。

Web

さて、出版は前述の通りですが、Webの展開はけっこう難しいです。いまどきWebサイトを持っていない会社は少ないと思いますが、Webサイトの役割はいろいろあって、位置づけも異なります。大別するとおおむね次の2つがあるでしょう。

  1. 何かを売るための媒体となるWebサイト
  2. Webサイトの機能に対価を求めるWebサービス

ミニコme!はこの場合、1となります。オンライン文芸誌破滅派は2ですね。

問題は「対価を得る方法」という点です。金銭の受け取り方に関してはいくつかあり、それぞれに適したサービスの提供方法があります。

都度課金

都度課金というのは、その都度お金を請求するものです。

まずまっさきに思い浮かぶのは作品を売ることです。たとえば、僕が「方舟謝肉祭」という作品を投稿して、それを100円で売るとか、そういうモデルですね。これは取引契約が都度発生するだけなので技術的に簡単ですし、利益の分配も楽です。「Aさんの作品が10万円分売れたので7万円どうぞ」という感じですね。ただ、売るのが大変です。「どの作品に力点を入れて売っていくべきか」という判断も必要になってきます。

定額課金

Webサービスにおいて有力なモデルの一つに、月額課金というものがあります。平たくいえば会費ですね。

携帯電話のキャリア(DoCoMo, au, Softbank)は「公式サイト」というサービスをやっていて、月額300円とかで見られるようにしています。この定額課金制は事業モデルの優等生と言われているのですが、それは会員を頭数とすることでサイト全体での売上の見通しがよくなるからです。売るものが少なければビジネスもやりやすいですよね。また、幽霊会員の存在が意外な副収入になっていることもWeb業界ではよく知られています。みなさんも月額100円のサービスに入会して何ヶ月も退会し忘れたという覚えがあるんじゃないでしょうか。

破滅派でこうした「会費制」のサービスを行うとしたら、たとえば「PCでは誰でも無料で読めるけど、スマートフォンからも読めるようにするなら300円、携帯電話から読めるようにするには500円」などが考えられます。本などは「通勤電車の中で読む」などのシチュエーションに応じた需要が考えられるので、ここがアイデアの出しどころです。

ファンクラブ制度(月300円でポイントを買って、それを特定の作品に送れる)とか、地味な使い勝手向上(しおり機能などの便利な機能が使えるようになる)とか、ここら辺は他にも色々ありえるので、リリースをお楽しみに。

広告モデル

ちょっと前にFREE!という本が流行りましたが、広告モデルも考えられます。ただ、広告はあくまで副次的なものと考えています。

これは僕の個人的な考えですが、広告は没入度の低いものの方が効果が高いんではないかと思います。YouTubeが黒字化に苦戦した理由の一つに、動画の没入度が高すぎるというのがあったそうです。ユーザーは動画を一生懸命見ている最中に広告なんて見たくないんですね。破滅派は文芸で出発したサイトなので、読むことへの没入を妨げたくはありません。もっとも、動画サイトPandraのような事例もあるので、努力次第ではあります。

破滅派の未来はどこへ?

破滅派はその名が示す通り、こうした金勘定に疎い団体ではあります。ただ、作品を作る人に対して還元をしたいというのは宿願でありますので、「一応こんな風に計画を立ててはいるんだな」ということだけご理解ください。

次回以降はもうちょっと内部の話、「同人とは何か?」について再定義を行いたいと思います。「同人は破滅派のお客様? 仲間? パートナー?」という大変ナイーブな点について書きますので、お楽しみに。

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監修小林弘人

読み手小林弘人

翻訳高橋則明

発行NHK出版

発売日2009 年 11 月 21 日

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