苦悶の幹 – 両神山遭難者の苦悶の残留思念を宿す七滝沢

しょうだまさとも

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767文字

両神山七滝沢『苦悶の幹』│両神山七滝沢コース遭難研究ノート

両神山遭難者の苦悶の残留思念を宿す七滝沢の『苦悶の幹』

両神山七滝沢『苦悶の幹』両神山七滝沢コース遭難研究ノート


 

 筆者は遭難事故研究の依頼を受け、両神山の七滝沢でPIROT社AR.Drone2.0零式改造機を無茶ぶりに飛ばしていた。高度100メートル付近で風にあおられ、遂に、超高度でWifiの範囲を外れてしまう。おそらく墜落して「しまった!」とやりながら、手元のデバイスで航跡をトレースする。追尾した航跡の、遷移の最後の座標を確認しつつ大体の見当をつけて機体を回収しにゆく。それでも機体の回収まで半日を要したのだった。墜落地点は、予想したポイントから数百メートル離れていたからな。目視範囲のラジコン機体の回収がこれだけ難しい。

すっかり日は暮れ、あたりは暗闇のベールに包まれていた。沢沿いは亡霊だらけ、遭難者苦しみの残留思念で空間が歪んでいた様だった。強風にあおられた草木がまるで苦しみの詞を唱え続けている感じだ。おっかない!単独行の筆者の気は急いて、いよいよ下山したがる。急ぎ足で正規のルートからショートカット、急斜面を半ば滑落気味に降下していると、不意に野犬の群れに遭遇して「しまった!」とやるが仕方ない。暗い、一体何頭いるかわからない。筆者は軍用のサーチライトを群れに向けながら、にらみ合い対峙ス。やがてボスと思しき個体の鼻先にトーキックの打撃を与え、機先を制したのだった。
選択行動を最適化してリスクを管理出来たから、何とか難を逃れた。均衡ゲームの屁理屈を応用し、通用した事例である。あまり関係ない。普通の人ならば、ナイフを取り出して泥仕合を仕掛けるかもしれない場面だった。やらばお互いに大けが、あるいは命を落としてお終いだった、と。

 

七滝沢ね~…何だか「べっとり」とした視線を感じたんだが、気のせいだろう。

2015年9月22日公開

© 2015 しょうだまさとも

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