2016年6月9日、第3回とっとり文学賞の受賞作が決定した。最優秀作品となったのは古林邦和氏(69)の『熱帯に降る雨』で、7月中旬に刊行予定だ。

受賞した古林氏は元高校教諭で、退職後は農作業のかたわら執筆に勤しむ日々を送っているという。とっとり文学賞への応募は初回から行っており、今回の受賞はまさに三度目の正直だった。 受賞作『熱帯に降る雨』は5つの短編から構成された作品だが、ベトナムやカンボジアを舞台に社会問題を鋭く指摘しており、さすが元教員らしい切り口だといえるだろう。

とっとり文学賞は新日本海新聞社が主催する文学賞で、鳥取県出身者・在住者・在勤者を対象に公募されている。3回目となる今回は、過去最高の33編が応募された。ほかに佳作として、能見一範氏(44)の『風の街 水の色彩』、蔵田豊氏(61)の『ムーンフェイス』も選ばれている。

近年は地域に根差した文学賞が盛んだが、ローカル文学賞は何十年も地道に小説を書き続けてきた作家に光を当てる役割を果たしている。ここ10年ほどメジャーな文学新人賞は若手作家偏重の傾向が強いが、それに対するカウンターとしても、各地のローカル文学賞に注目していきたい。