花蝶風月

渡海 小波津

小説

2,576文字

日本古来より美しいとされてきた花鳥風月を私なりに描いてみた。
随筆と小説を組み合わせの作品です。

~花蝶風月 ~

春の予感なのか、命の息吹なのか。風に揺れる姿に人の感情も揺れる、花の命は短いというが、その花を咲かせるまでの花の力強さたるや。雪の下で静かに耐える根性の図太さたるや。

女性の美しさを例える言葉として用いられることもよくあるが、その強さとは、時期が異なるのだ。花は咲くまでが強く、女性は実を結んでからが強い。花は散 り際が美しく、女性は咲き際が美しい。月下美人という言葉もあるが、月の下、一輪咲く姿は唯一、花と女性の共通するところではないだろうか。

一輪の蒲公英が咲いている。花の集まりであるそれを一輪と呼ぶことが正しいかは知らぬが、紋白蝶などそっと添えたなら、何と春の麗かさを演出できたことだろうか。

ふと気付くと、花を眺めていた私の先に、若い女どもが何やらこちらを、ちらちらち見ながら談笑しているらしい。私は屈めていた腰を伸ばし、気にせぬ素振りで大きく伸びをした。女たちはきゃあきゃあと言いつつ、それぞれの処へと散っていった。

残された私の傍らで、綿毛が今にも空へ散ろうとしていた。

 

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2012年7月14日公開

© 2012 渡海 小波津

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