兵庫・芦屋市民センターで『阪神間文学にみる 大戦下の街と暮らし』展が2016年7月16日(土)より開催中だ。野坂昭如、遠藤周作、小松左京といった阪神地区ゆかりの作家たちが戦時下の暮らしをどのように描いたかを焦点とした企画展で、文学を通じて戦争と平和についてあらためて考えさせられるものとなっている。会期は8月15日(月)まで。

本展覧会では、著名作家たちが作中で描いた戦時中の風景を抜粋しつつ、それを現地の写真とともに紹介しているのが特徴だ。神戸大空襲を体験している野坂昭如や宝塚の空襲を目撃している遠藤周作の空襲描写は、さすが実体験だけあってリアリティが違う。単なる文学展でも歴史回顧展でもなく、文学作品を通じて戦時下の庶民の生活を立体的に再現する意欲的な試みといえるだろう。

日本歌謡史から軍歌がオミットされ日本映画史から戦意高揚映画がオミットされていることに顕著なように、高度経済成長以降、戦中文化はタブー視されがちな傾向が続いてきた。当時の国民の心情は理解できないでもないが、これは文化史的にはいたずらにミッシングリンクを生み出す行為でしかない。戦中を知る世代が消えゆく今だからこそ、あらためて戦時下の暮らしにスポットを当てようという視点は貴重だ。

昨年8月には西宮市で同タイトルの講演会が開かれており、それが好評を博したことが今回の企画展に繋がったのだろう。芦屋へ足を運ぶ機会のある人は、ぜひ時間を作って訪れてみてはいかがだろうか。