タグ: 夕暮れ 21件

  1. でぶでよろよろの太陽(3章 の1) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,296文字

       (3章の1)      ずっと夕暮れだった。    夕日が西の空に大きく浮かび、稜線に沈みかけている。ここは、いつまでたっても夕暮れだけが続く世界だった。    夕暮れは一向に、闇へと突き…

  2. でぶでよろよろの太陽  (4章 の1) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,544文字

       (4章の1)      1年、あるいは2年前だろうか。いずれにしろ少し前になるが、わたしは強く印象に残るテレビ番組を観た。もちろん今歩いている「夢の世界」でのことではない。現実世界でのこと…

  3. でぶでよろよろの太陽  (4章 の2) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,236文字

       (4章の2)      調子を崩したのが金曜日の夜のことで、混みあうだろう土曜日に医者に行く気が起きず、週末安静にしていれば持ち直すだろう程度に考えて自宅で静養していた。しかしじっと寝てい…

  4. でぶでよろよろの太陽  (4章 の3) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,665文字

       (4章の3)      しかし人間の体というものは、耐用年数がくれば勝手に壊れてしまうらしい。わたしの場合は元々すい臓という部位の耐用年数が短かったというだけのことなのだろう。    これ…

  5. でぶでよろよろの太陽 (5章 の1) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,170文字

       (5章の1)      わたしのすい臓はがんで、さらにはステージⅣだった。これはもう、治療のしようがないくらいに進行しているという状態だ。    ある日担当医は、点滴で元気になったわたしを…

  6. でぶでよろよろの太陽 (5章 の2) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,405文字

       (5章の2)      告知を受け、わたしはすぐさま会社を辞めた。働いている意味がまったくないからだ。一人暮らしで家族はいない。どうして余命が半年なのに働かなくてはならないのか。成し遂げた…

  7. でぶでよろよろの太陽 (5章 の3) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 1,446文字

       (5章の3)      点滴で意識が戻り、医者は、血糖値が急激に落ちたので意識を失ったと伝えた。もうわたしのすい臓はほとんど機能していないということだった。    それ以降は入院生活となる…

  8. でぶでよろよろの太陽(6章 の1) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,034文字

       (6章の1)      そこに、一人の男が現れた。    男は、元々関係の薄い、そして今ではほとんど付き合いの切れている友人の名を出した。その紹介で訪ねて来たのだという。    あいつか。…

  9. でぶでよろよろの太陽(6章 の2) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 1,634文字

       (6章の2)      その頃わたしは、病院から退院を迫られていた。身内のいないわたしを長く置けば、いずれ病院はやっかいを抱え込むことになる。まだ多少は動くことができるここらがチャンスと見…

  10. でぶでよろよろの太陽(6章 の3) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,014文字

       (6章の3)      特別サービスについて、根を詰めてとうとうと話されたわけではない。もはや敵地に乗り込んでのそれなので、相手は強引にでもいい加減にでも、もっと言えば強制してでもできたは…

  11. でぶでよろよろの太陽  (7章 の1) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,119文字

       (7章の1)      病室から部屋を移され、機械が隙間なく並ぶ部屋で『業者A』の人間に囲まれることになった。いろいろな線を、そして管を、とっかえひっかえ体に付けられた。これが夢の世界に行…

  12. でぶでよろよろの太陽  (7章 の2) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 1,751文字

       (7章の2)      契約を交わしたとき、夢の中ですごす環境を考えておいてくれと言われた。ようは、3日間を生きる世界のことだ。地域も時代も問わないという。さすがに他の星や深海など、およそ…

  13. でぶでよろよろの太陽  (7章 の3) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,249文字

       (7章の3)      翌日、点滴注射を受けているときに沢田が来た。腕の血管に取り付けた管にセットした大型の注射器を、医師が親指でゆっくり押す。赤味がかった液体が管を伝ってわたしの中に入っ…

  14. でぶでよろよろの太陽  (7章 の4) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,121文字

       (7章の4)      わたしはまた、ふと思いだす。以前に一度、夕日を見つめていて思ったことを。    もしかしたら自分は死ぬとき、夕日を見たくなるのではないだろうか。きっと死ぬ間際になっ…

  15. でぶでよろよろの太陽(8章 の1) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,499文字

       (8章の1)      わたしはずっと歩いている。「汗よ乾け」と念じていないので、全身汗まみれだ。この時代のシャツは吸水力が悪く、流れ落ちる汗でパンツまでもベトベトになっている。    小…

  16. でぶでよろよろの太陽(8章 の2) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 1,690文字

       (8章の2)      こんなにも感覚や意識がしっかりしている世界が夢だというなら、もしかしたら、現実の世界だって夢なのではないだろうか。わたしは自分の末に、一縷の希望を持った。このあと間…

  17. でぶでよろよろの太陽(8章 の3) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,835文字

       (8章の3)      田んぼの向こう、遠くに稜線がある。しかし黒い雲と繋がり、稜線との境目がなかなか判別できない。凝視して、多少薄く見えるところから雲だと、かろうじて分かる程度。雲は昼間…

  18. でぶでよろよろの太陽 (9章 の2) でぶでよろよろの太陽 / 小説

    • 勒野宇流
    • 6年前
    • 2,597文字

       (9章の2)      バスがやってくるまでにかなり待たされた。これはわたしが、「バスがすぐに来る」と念じなかったからだ。田舎のバスは本数が少なく、長く待たされるのが当たり前なのだ。特に念…