301号室

山谷感人

エセー

2,251文字

三畳一間。

現在、最早、約一年ほどになる。
落ちぶれた遊民の末路なる、諸々、典型的な紆余曲折が有って地方の港町で、僕は自身も含めたルンペン13人と共同生活をしている。それは宿命として、ライフワーク的に1人1人、テーマを持って、いずれ詳しく紹介する所存な故、ここでは詳しくは省き、部屋のハナシをする。
そもそも、僕の他、同時期にルンペンになった、もう2人以外は結句、様々なトラヴルまみれで邏卒に世話になった方々が入居している。完全に輩。僕は、それ以外の2人と初期に「我々は前科も一切ないのに、諸事情でタイミング良く、このルンペンハウスに入れて助かったね」と語り合った。「そうだね。然り!」と述べていた1人は、ギャンブル依存症だったので、その2ヶ月後くらいに失踪した。もう1人は「退去したい」と現在、食堂で会う度に、憔悴し念仏のように呟く。要は3人。コロナで福祉関係も人の受け入れが制限されていた時、偶々、素人さんが家なき子になり普段、おいそれと門を跨げない、海千山千の扉を開いた訳だ。金銭になるからね。だがコレは何度も感じる事実では有るが、僕は幸いルンペンハウスをネタとして笑えるので、ペインでは非ず。
だが然し「爺ィ達よ、面倒臭いぜ」なる部分は無論、端々に。
ルンペンハウスで僕に与えられている部屋は、最上階。3階の一番手前の301号室である。三畳一間。当然だが冬はザ・バンドの歌詞の如く「大の漢まで他界する。したくなる」寒さであったし、早くも五月。夏は呼吸困難になりそうな熱風が籠る。
細長い通路に、ハーモニカ横丁的に部屋が6つ。音なんて完全に筒抜け。当然、4の数字抜きで304号室はない。
隣の302号実に最早、八十才になり、ルンペンハウス滞在十年なる人が居る。埼玉の浦和出身で、流れ流れてルンペンハウスに来たらしい。僕も、東京は赤羽に住んでいた頃、埼玉は西川口や蕨なぞに良く遊びに行っていたので追憶を述べたら「昔の浦和はよ~、田んぼしかなかったぜ!」と力説された。僕は、どこの地域にしろ、郷土史はアイ・ライクなので甚だ愉快であった。「日本酒、呑め!」と、無論、敷地内は禁酒で、そうして僕は日本酒を呑めない体質で、彼がトイレットに行った隙にコソッと棄てていたが一度、管理者が急に食堂に入って来た時、彼の月桂冠の紙パックが存在し「いや~、コイツが呑みたがってな!」と、売られたのは愛嬌である。
303号室。ここには少し前、僕が破滅派にクソみたいなエッセイを書いて登場しているが、元々は山形県の大地主の次男であったがギャンブラーで九州送りになった、タクなる人物が居る。三十代半ば。彼に就いては今後、僕がその、ルンペン殿の13人を下らなくアップした時のキーパーソンになろう。
305号室。広島出身の前科数犯。だが然し、裏表がなく、ハウスでは一等、ハナシ易い。四十代後半。
306号室。空気なので年齢不詳。
本題に入る。最後の1人。307号室。五十歳過ぎのオッサン。彼がたまに厄介なのである。日中。共同のトイレットで会った時、此方が「こんにちは!」と挨拶すれば当然、返答は来る。然しながら先程も述べたが1人、三畳一間の密接した集合生活。声は、筒抜け。その後「ケケケ、ケケケ……」とトイレットで嗤っているのである。
なんか怖いけど「まあ、いいや」そうしたトコロなんだしでスルーしていたが、アルコール依存症でも有る彼は夜中、午前3時くらいにキマッてしまい歌謡ショーを始める癖がある。
どっかの大衆割烹料理やさん。そこの料理長だった、みたいなハナシを煙草吸いの食堂で遇席した折、聞いた。僕は、世代的にポンチ画「美味しんぼ」の熱心な読者だ。感想として、かの作品の良いトコロは、登場人物の全員が、各々の道を極めようとした、常識がない完全バカしか居ない箇所。
然し、一流か二流か、三流か識らないが、307号室の彼が真摯に向き合った調理師の道にとって「老舗の割烹料理やさんの板長」が崇高で、ロックならキッズが「ジェフベックになりたかった」文藝なら「横光利一になりたかった」なのだろう。その道から外れてしまいルンペンハウスに来た、彼の鬱憤も判るが、そこは自他共に「人として一等、女々しい」と先輩、仲間、友人等に揶揄されている僕からも伝えたい。忘れろ。
結句、302号室の、浦和出身の老人は脳が呆けているのか、自身が過ごした白黒時代を懐かしんでいるのか確認していないが、一日中、エロ・ヴィデオを観ている。イヤホンしていても、完全に筒抜けだぜ、三回目だ。
纏める。307号室が、三日に一度くらい深夜、エゲレスで六里以上離れた、民家から苦情が来たAC/DCのライヴもこんな感じだった? としたサブちゃんとかの曲を大音量にて唄う。良い。好きにすれば。だがそうしたら、302号室の元・浦和市民が、対抗して白黒のイヤホンを外し、負けまいと、喘ぎ声を堂々と響かす訳である。で、また千昌夫や前川清とかが307号室からハイテンションで流れ、お隣の302号室は更にヴォリームを上げ捲る。長い時は、そのファイトが二時間半、ある。深夜から明け方まで、喘ぎ声と演歌。流石に近隣から苦情が来たら、関わらないように逃げようか? とは少ながらず思う。
今宵、またそれが始まるだろう。犯罪はなくとも、人生に失敗した僕が彼等の歌謡ショー、喘ぎ声合戦を鑑みると「素敵な空間だが、本物じゃなく、モノホン過ぎるだろ!」
以上、ルンペンハウスの13人執筆へと入る前の、301号室からのリアルな、お部屋レポートでした。

2022年5月7日公開

© 2022 山谷感人

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