僕が居ない部屋のドア前で鳴かないで、おくれ

山谷感人

エセー

1,113文字

猫よ、猫。

以前。ほんの少し前。一市民。所謂、世俗の人。そうした営みをしていた頃、僕は猫と暮らしていた。未だにスマホの待ち受け画面は彼女(雌)である。
朝は四時半に始まる、始まっていた。取り敢えず、元気な猫パンチを喰らわせられ、僕はウェイクアップする。「食事するかい?」で普通、ニャンと鳴き、すると想うだろう。だが然し、事実として一切、食べない、食べなかった。完全にルーティングと云えば聞こえは良いが、狙った嫌がらせ、である。
そこから僕は、起きてしまったので、ロックンロールを聴く。実際、僕はカントリーロックが好きなのだが、猫は雌ぶってだからなのか、底辺な僕に迎合して呉れているのか、モトリー・クルーなぞ掛けると喜んだ。ガールズ・ガールズ・ガール。
猫は寝子なる語源とした一説も有るらしいが、彼女は人間の、僕よりも寝なかった。常に「遊べ!」と要求してきていた。矢張り、似てくるのだろう、だったのだろう。所謂、ヒッピーの僕に瓜二つなる動きをしていた。これも似た、ちょっとナイーヴなトコロも有る故に、トイレットの時はコソッと行くしね、行っていたしね。
今、現在。そこから遠く離れた箇所にいる僕は、雨が降る窓の奥を眺めている。君とはもう、会えない。ニァア。自身なりに、百万くらいの書物を読み(ほぼ娯楽書)或る程度、語彙は有る心算でも、君との共通言語が一等、大切であり、これからも僕にとっては、それは変わらないから。四里ほど離れた、君が居る窓の向こう側から叫んで呉れ。ニャア!
結句。何が言いたいかとなると、無聊の取り繕いである。アルコールを浴び、おセンチになっただけである。実際、今、僕が滞在している陋屋の下、ガレージにて野良猫に食事を与えている。完全、君に対する浮気である。一人じゃ、居れなかったのだよ。
その猫は、君と違ってニァア々々とは叫ばない。君のように贅沢、所謂、チュールを上げても狂喜せず、黙々と食する。「ウチのギズ(君の名前だ)は騒がしかったぜ」と、たまに、その猫に語るよ。然し、返答は非ず。投影されて似るのなら、その猫が感じている僕は、君と暮らしていた頃と違って、実に陰鬱で接し辛く、格好悪く、汚れて、愉しみの欠片もなく、そうして、そこに無い光を求めている俗物だろう。でも少しはニャア! 云わないと駄目だよ。モトリー・クルーはまだ早いから、ガンズ・アンド・ローゼズくらいから、スマホで聞かせ学ばせよう。
ギズよ、ギズ、ギズ(←猫の名前)。取り敢えず僕らは、仲良くシチュエーションを持っていた。その、追憶だけは忘れず行こう。クロスロードを僕は、左に曲がってしまった。ギズは右に来いとニャアしていたのにね。
サヨウナラ、トゥー・ビー・ムーヴィング。

2022年4月26日公開

© 2022 山谷感人

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"僕が居ない部屋のドア前で鳴かないで、おくれ"へのコメント 4

  • 投稿者 | 2022-04-29 17:02

    すべて、お猫様の言う通りです。
    ちゅーるは無敵。

  • 投稿者 | 2022-05-01 21:22

    もっと、ドリンカーの「出来ない人が、感傷的に云うな」で酔っていて適当に(猫に対する愛情は真摯なれども)羅列した駄文にコメント、サンクス。↑

    著者
  • 投稿者 | 2022-05-01 23:02

    ギズちゃんへの愛だけは本物だったと胸が痛みました。おお、Broken heart、ギズちゃんもきっと山谷先生をたまには思い出してますよ。ああ、Lonely heart

  • 投稿者 | 2022-05-02 12:45

    大猫さんに。
    だけ。それが伝わって良かったです。
    その本木以外の枝葉は、酔いどれて鼻毛を抜きながらの事実に則しながらのユーモアですし。
    その、だけ。が日本文藝で、そもそも~(長くなるのでカット)。
    だけ。だけの短文、駄文にコメント、有り難う御座いました。

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