新しい友人

山谷感人

エセー

2,689文字

最近、親しんでいる友人の事を即興にて語る。なお、所持のスマホが調子悪いのであろう、改行・一文字下げになっていないのは御容赦を願いたい(そのチャレンジには三時間、奮闘したが無理であった)。

最近、N君と云う新しい友人が出来た。
いや、新しい、とは語弊もある。十年前の一時期、私は彼と良く、呑み歩いていたが、関係を壊すような第三者が現れて、そこに人間関係の諸々な感情も絡み、結局は最後、御互い単純に面倒だなとなり果ててしまい、絶縁した。その後、彼がどうしているのか? などと、根が飽きっぽいしアルコールの力を借り、常にポジティブを装おうとする私は、全く以て拘泥しなかった。
二週間くらい前。
私は友人達とガチャガチャ呑んでいた。御存知の方もいるだろうが、つい先日、東京へ元寇と名付けた来訪をし、その地で関係者諸君にヤンチャ、かぶき、絡み、更には偽善者ぶりなぞまでも発揮し、疎開地へ戻る四時間前に、用水路じゃなくドブだろ? なるトコロで転び右肩を痛め、帰宅後『一ヶ月半は絶対安静。全治三ヶ月』の診断を告げられた身としては無論、必ず禁酒なのであるが、かぶきもの、なる私は、上がらない肩とズレている部位を友人連中に触らせ「名誉の負傷。武士とは、かくありたい」と泥酔し、或る者は笑い、或る者をドン引きさせるショーを演じていた。途中、ドブで転んだ時に着用していた、ジーパンやら靴を妻に捨てられたが、お気に入りの、熊さんがプリントされたTシャツは守ろうとして洗濯籠の下にコソッと入れた。然し直ぐにバレて何度も蹴られた、なる悲哀も交えながら。
そうした最中、スマホを弄っていた一人が「今から、N君が来るよ」と述べた。私は「へえ。あ、そう」と言葉を返した。
N君が最近、私の仲間達と交友しているとは聞いていた。まあ直接的に自身が、会う事もないと思うし、どうでも良いフリをしていたが、それに対し懐かしいと感じる想いも心底には確かに、あった。私はビアを一気に流し込んだ。そうして矢継ぎ早に数本の煙草を吸った。
やがてN君が現れた。私は先手を取り「久しぶりだねえ。老けたねえ」なる台詞を吐いた。彼は「お前に言われたくない」と瞬時に反発した。それから二時間半ほど、一緒に呑んだのだが正直、その時の事は鯨飲に至り何を話したのか記憶が、ない。

翌朝。
アルコールを一滴も嗜まない妻に、匂いがバレぬよう、ブレスケアをオーバードースして寝ていた私は、彼女が労務へと行ったタイミングで起きた。妻の前では酔いどれていてもマトモに会話が出来る狡猾な私だが、この状況で呑んだと云う犯罪者意識が働き、脳が、アイツが居なくなったら目覚めさせようモードになっていたのであろう。
私は、寝起きに日課としている、疎開地のローカルニュースを見る為に、スマホを手に取った。それを終え、着信履歴のチェックをすると、識らないテレフォンナンバーがあった。
昨夜、記憶がない、にしても最早、それが誰の番号かは判っている。躊躇せずにボタンを押した。
「……もしもし」
「お、N君かい?」
「お前、昨夜マジ、ウザかった。電話番号、教えろとか」
「そこが俺の美学だろ。識っているクセに。軽くテレフォンしようぜ」
「忙しい。五分なら」
そう多忙と言い張るN君を、なんだかんだで引っ張り、三時間、会話した。内容は下らないモノであったけれども。
その数日後。
肩の痛みと、それを癒す鎮痛剤とアルコールの、最悪なる組み合わせでの、タッグ攻撃による腹痛が、益々と酷くなるので、私は真摯に禁酒を始めようとした。一週間に二度は通院の、約束からは既にラナウェイしていたが、流石に他界してしまうかも、と案じたからだ。私は、八十二歳くらい迄は、生きる心算なのである。
公園で、ノンアルコールビアをチビチビ味わい、不味いなあ、無意味だなあと考えつつ日向ぼっこをしていたら、N君から電話があった。或る相談に乗って呉れ、との事だった。
内容は、ジャンルは違えど御互いに研究している、郷土史に関するモノであった。親しくしていた十年前にも、良く論じていた。
素面の私は、こうじゃないかしらん? あれは読んだ? と少し真面目に提示した。N君は時折、クククと笑いながらも、そうだねえ、と受話器の向こう側で、納得もしている様子であった。またもや、会話が三時間は続き、終了した。合間に公園近くのコンビニエンスストアに追加のノンアルコールビアを買いに行った私のベンチ下には、八本のロング缶が転がっていた。
それを片付けて帰ろうとした私に、更にテレフォンがあった。友人からであった。
「お、どうした? 今、公園でさあ……」
それを遮り、友人は言った。
「お前、さっき、N君に電話しただろ?」
「あ? いや、向こうから有ったぜ」
「嘘、つくなよ」
私は唖然とした。確かに数日前は、此方から着信したが。はてな? と思った。ノンアルコールビアに、大量のヤクブツでも混入されていたのだろうか?
「いや、だからさ。なんでそうなるか判らない」
「ぷっ。役者やのう」
「ちょい、確認するわ」
N君に、いやNのヤロウ、大説教だなと憤怒しながら、その日は本当となる、此方から掛けた。六コール辺りで、出た。
「ふぁい」
「ふぁい、じゃねえよ。なんで今日、俺から電話した事になっているのよ?」
「あ、早くもバレた? そっちの方が皆、愉しむと、伝えまくったよ」
「いや、待てよ。おかしいだろ?」
「え? お前、遊民じゃないの? この展開、おいしいじゃない。それとも似非か?」
私は、戸惑った。そうしてやがて反省した。如何にも、N君が言う通りだ。たかが、どちらが掛けたかどうかなる問題に噛み付き「それは違いますよね」なる、世俗のサラリーマンのような台詞を吐いていた自身に。何がヒッピーだ、何が、かぶきもの、だ。少し禁酒を決意したら、もうこれか。完全なフェイク、エピゴーネンじゃないか。
それから二人、極力、馬鹿馬鹿しい会話を、またもや三時間した。N君は「もう切るよ、長いよ」と何度も述べたが、開き直った私は、赦さなかった。

現在。N君とは、定期的に長電話をする関係である。私が掛けたり、彼から掛かってきたり。過去のイザコザも諸々も捨て私と彼は矢張り、再生した、大切なる新しい友人である。

また、彼はいずれ、長篇小説を書きたいらしい。大いに期待、愉しみにし、僭越ながら良い出来になるのを今、ビアを呑みつつ祈っている。この頃、妻に、部屋でのアルコールの隠し場所を発見されたので、忍者レベルに音に気付かれぬよう、コソコソ味わいながら、ね。

今回も即興な故、推敲なぞ無論しない、見直さない。それでいい。だが、私のスマホが壊れているのであろう、改行で一文字空きにならぬのにはジェントリー・ウィープス。
アディオス!

2017年2月27日公開

© 2017 山谷感人

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