まず、創刊にあたり、私的決意表明。
所謂、僕は君ら刺身の、ツマに成り果てたくはないから、この辺でそろそろ、ヒューマン・レースにサヨウナラとする。
「破滅派」の同志以外、僕にはもうアルコールか、大富豪ゲームの話しかしないでおくれ。革命を、喰らえ。
二千七年、二月末日、深夜のドヤ街公園にて。
或る、平凡な一日(酔態の、脈絡なき連鎖報告)
さて、歩くアルコール中毒図鑑たる僕は、何時ものように逢魔が刻に目を覚まし、慌てて、枕もとのノート・パソコンを立ち上げた。クィーン! クィーンの使い方が悪かったのだ。その所為で、くだらなく夢でうなされました。おかげで、さあ今すぐゲーム三昧。大富豪がジャックを自信げに切った時、僕は、「彼女」を出し惜しんだ。貧民のヤロウも、思わせぶりな「テ」だったしね。神様、日本酒ワンカップ代として百五十円くれてやるから、僕をあの瞬間に戻してよ、チュッ。
ahoo(原文ママ)のゲーム・ルームは、常に作意を感じさせる塩梅に満員だね。それに一体、奴ら「荒し」お得意の、メイン・コーナーでの幸せ絵文字はなんなんだ! まあ、上級レベル・コーナーの裏口を知っているんで良いけれど、竹槍一本持って、「キタ」に攻め込もうとイマジンしちゃう程(ジョン・レノンさん御容赦を)、毎度毎度いらつかせやがる。前日に、ワザと飲み残していた缶ビールをチビリ。ストレートに臓腑へと入ってくるぜ。おいおい! 起きているだけで、もはや息ギレ状態中。形が明白に判るくらい、パンパンに腫れた肝臓が親友の「かぶきもの」なんて、未だ見ぬマイ・ハニー、現世では珍しい筈だろ? 逆にそのシチュエーションに、感謝感激しておこう。腹いせで、どこかの主婦辺りとの、大富豪ゲームに勝ちながら。
――ここから約二時間半、アルコールと共に、或る意味、命懸けのオンライン・大富豪ゲーム対戦。隣の部屋で同居人のF君が、せっせと「サパ」している音が聞こえていた。本日の通算成績、一勝五敗。ふて腐れ終戦、「じっと手をみる」――
今夜ももう惨めに敗れたし、アルコール以上には、何にも心が動きそうにないから、究極の惰性に従って、どっぷり鯨飲する事にしよう。遣る瀬なくなれば、紳士たる同居人兼看護者のF君に、派手に管でも巻くか。あ! ああ、そうだ。先日ドヤ街、「ヤマ」のおでんやの女将が、私そろそろ誕生日なのって笑っていたな。義理を欠いちゃあ、駄目人間は努まらねえ。どれ、狂おしく体は重いけれど、挨拶に行くか、行ってやるか。まずは朗らかに、素敵なトーンで、コンバンハァァッ! て、伝えられる準備だな。そしてその後は、今年の冬は本当に暖かいですね、雨、降りませんね、競馬の調子はいかがですか、んじゃ、例の、ダブルの緑茶ハイと冷奴で、か。アハハハ、これから大音量で古臭いヘヴィー・メタルでも掻き鳴らし、ヨーイドーン、発声練習をスタート。トホホ、完全に、逝きてえ。
やがて少しは覚醒。一応、そろりそろりとドアを開け、リビングを越え、外に出ようとしたところ、まさに絶妙なるタイミング、F君も部屋より姿を現せた。なんだオイ、早速と月並みな台詞の予習が出来るじゃん。チープ・トークをブチかまそう。 ――やあF君、何? お食事後のW・Cタイムかい?―― 然し、さすがに敏感ででもある彼は、僕の意図を見透かした。答えを返さず、僕のアルコールで窪んだ目を見て、ただただ微笑んでくれた。ええ! 男色じゃないが泣いちゃいそうだぜ! 君と奇妙な縁で暮らし始めて、もうかれこれ一年の歳月か。アルバイトもせず、借金の自転車操業生活。引きこもりで、ジャンキーなこの僕を許しておくれ。いや、でも、それこそ、それだからこそ、君や同志諸君には、三流の欺瞞を吐き続けてあげる。瞬時、脳裏に湧いた、酩酊の滅茶苦茶な一句を捧げよう。 ――春風や、エピゴーネンは、今宵また―― 外出してキマース。
四日前から、慢性的に右足が攣っていて、至極歩行困難の有り様。コラッ! 僕は本年度大河ドラマ主人公、片輪のペテン師・山本勘助か! 昔は、あんなに健脚だったのにね。千住大橋が、長すぎて渡るのが辛い。
やっぱり、「ヤマ」を訪れると安心するわ。草臥れてはいるけれど、僕という不審者すら目立たないんでね。ニセ開放気分にひたりながら、さあ、おでんやの暖簾をくぐって、一所懸命に飲み果てよう。女将は、来店を喜んでくれるかな? 何にしろこの後、そく記憶を失うくらい泥酔して、僕なりの平凡な一日が過ぎるのは、億が一、現代版二・二六事件が勃発したとて間違いのない事さ。やれやれ、今日も実質活動時間は、ほんの僅かなモンだったな。
では、アルコールが待ち侘びているし、この界隈についてキャッ・キャッとした様子の、おもしろおかしい随筆は幾らでも可能だが、早くも創刊号で指定された枚数に達した為、今回は敢えて僕の破滅度数、雰囲気を軽く報告のみ、本体はいずれって言い訳しオサラバとしよう。えへへ、そう、バレたかい? 結局はこの愚文を書きながらも、既に飲み尽したいだけなのさ。同志諸君にしか見せない、見せられない、「豊橋オフライン・ブルース」と命名した、ドストエフスキーの「白夜」を気取った最底辺の不倫恋愛ごっこ小説もあるのだが、まあ、それもまた、宜しければ次回に再会が叶った折りにでも。クソッ! 「ガソリン」が足りず、嫌な幻聴が聞こえてきた。用意していた、百万の言葉も呂律が回らない。名残惜しいが、それ故にもうグッド・ナイト。去ッ!
破滅駄目人間組織・名誉顧問 山谷 感人 拝
――(続く)
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