教会にて

いい曲だけど名前は知らない(第3話)

高橋文樹

小説

1,032文字

いつだったか忘れたが、NHKのディレクターに「桜庭一樹先生が番組で超ショート小説を募集するからなにか書いてくれ」と頼まれて書いた。その後、どうなったかは知らない。お題は「教会 少女 カーテン」だった。

はじめに言い出したのは誰だったかな、ということを最近の大尉はよく思った。それも仕事の前に限って。

大尉は廃墟の街を歩いた、誰だったかな、と時には呟きさえしながら。民兵の奴らか? いや、軍の仲間内だったか? 思い出せなかった。敷石の隙間から若いヨモギが顔を覗かせていた。

民兵達がパレードをする予定の広場から二キロ離れた丘に古い教会があった。ショッピングセンターなら狙撃にうってつけなのだが、広場から近すぎる。教会がちょうどよかった。あれだけ遠ければ民兵共も気付かない。

教会に辿り着き、鐘楼へと昇った。時計の飾り窓がおあつらえ向きに開いている。大尉はケースを置き、ライフルを組み立て始めた。音一つ鳴らなかった。美しい少女が眠る前に身支度するような仕草だった。

「こんなところから当たるのかね?」

振り向くと、赤い僧衣を着た老人が立っていた。

2015年6月16日公開

作品集『いい曲だけど名前は知らない』第3話 (全10話)

いい曲だけど名前は知らない

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© 2015 高橋文樹

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