
『破滅派』は低徊趣味を掲げるオンライン無料文芸同人誌です。
常に破滅しそうで、一見して不真面目、しかも「もしかしたらホントに破滅してんじゃないの?」と疑われています。
ホントはそれなりの野心があります。
面白そうだなと思った人は一緒に作っていきましょう。
学校を出て、社会で経験を積み、年を取れば自然と分別がつくだろうと考えたのは、単なる願望だった。身に付いたものは、衆人に入り混じって放屁しても恥じない厚顔さだけ。ああ、俺はなにをしたかったんだと気づいてから、人はようやくよけいなプライドをかなぐり捨てる。
許されていることの多かった世界から足を踏み出し、いくつものしがらみに足を取られながら呻吟する日々を忍耐の一語で耐えながら、向こうからやってくるのを待っている。酒の疲れが抜けないことや眼前の人の名前が思い出せないことに苦笑しつつ、歳を取ったと妙な納得をして、足を踏み出した自分の勇敢さに思いを馳せる。
はじけるようなやんちゃさをぶつけ合い、馬鹿さ加減を競っていた者同士が後年にお互いの疲れた無表情な顔と社交辞令を向け合うとき、社会の荒波に揉まれて奴も分別が付いたのだと納得しあう。かつての溌剌とした自分の顔を相手の中に見出そうとして成らず、お互いにかすかな失望を感じながら別れる時、何年たっても周囲にスキャンダルを振りまいて止めない者の愚かさはひとつの貴重な資質であることに思い至る。
『破滅派』には数年先に夭折した兄弟がいた。その産声を触れ回ったのは素っ気無いA4のビラで、「タナトスむんむんたる若者来たれ」などと書かれていた。なんで「破滅派」なの、と誰もが聞いた。そのビラを配った当人たちは、なぜそれが「破滅派」なのかなどと自問したことは一度もなかった。なぜ? なぜ「破滅派」以外なんてことがありうるんだ? ビラを配った若者たちは、「なぜ」という言葉の貧乏臭い響きに舌打ちを返しながら、余ったビラを眺めていた。
フランスで、まだ何者でもなかった若者たちが、安アパートに集って安いワインに酔いながら、まだ予算さえ確保できていない映画の計画について無謀な思い付きを塗り重ねていた。「あれは事件だった」と、ある批評家は論じた。これは事件なのだ――そう思っていたのは当の若者たちだけだった。ヌーベル・ヴァーグの旗手たちの話である。
夢物語を読むことを虚学と断じ、人々の判断力を溶解させながら、生きることに金と国を優越させるような別の夢物語を吹き込んで恥じない輩がいる。ドンキホーテは騎士道物語を読んで旅に出た。彼の拠り所としたのもまた夢物語であった。
いまわたしたちはこれからも現れるであろうドンキホーテの息子たちのために、夢物語を読み、みずから夢物語をつむぐ。
2007年3月2日
破滅派
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